ハシコープ / HCP:損益分岐点に向けてさらなる前進が必要なテクノロジー関連成長株の最新の株価分析と今後の見通し

Ticker: HCP / 3722文字 / 所要時間8分程度 / 中立

サマリー

  • ハシコープは世界中の企業にクラウド・インフラの自動化を提供しているテクノロジー企業である。
  • 同社の収益は伸び続けているが、営業損失は依然として大きいというのが現状である。
  • 私は、経営陣が営業損益分岐点に向けて一定の前進を遂げるまで、同社に対して「中立」の立場をとりたいと考えている。

ハシコープについて

ハシコープ(HCP)は12月7日、2024年第3四半期決算を発表し、売上高とコンセンサス利益予想を上回る着地となった。

同社は、クラウド・インフラ・オートメーション・ソフトウェアと関連サービスを複数のプラットフォームで提供している。

トップラインの売上高の成長は緩やかになっており、営業損失も縮小しているが、経営陣は、通常よりも高い資本コスト環境の中で、営業損益分岐点に向けてさらに前進する必要がある。

そのため、私は、現時点では、同社株式に対して「中立」のスタンスを取っている。

ハシコープの概要と市場

ハシコープは2012年に設立され、米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置いている。

同社のCEOはデイブ・マクジャネット氏で、従業員がわずか30人の時に同社に入社している。

マクジャネット氏は、同社に入社する以前は、大企業やスタートアップを含む11〜12社に勤務し、創業から株式公開(IPO)までの事業規模拡大を経験するなど、様々なキャリアを積んできた背景がある。

一方で、ハシコープが提供する主なソフトウェア製品は下記の通りである。

  • Vagrant:再現可能なソフトウェア開発環境の構築と維持をサポート。
  • Packer:デプロイ用の仮想マシンイメージを構築するツール。
  • Terraform:クラウドプロバイダー間で仮想インフラをプロビジョニングするための Infrastructure as Code ソフトウェア。
  • Consul:サービスメッシュ、DNSベースのサービスディスカバリー、分散KVストレージ、RPC、イベントプロパゲーションを提供。
  • Vault:秘密管理、IDベースのアクセス、アプリケーション・データの暗号化、監査を提供。
  • Nomad:クラスタ内のワーカーノード間でのタスクのスケジューリングとデプロイをサポート。
  • Serf: クラスタメンバーシップ、障害検出、オーケストレーションのための分散型ソフトウェア製品。
  • Sentinel:ハシコープ製品のためのポリシーアズコードフレームワーク。
  • Boundary:信頼されたIDに基づき、システムへの安全なリモート・アクセスを提供。
  • Waypoint:プラットフォーム間でビルド、デプロイ、リリースを行う最新のワークフロー。

市場と競争

世界のクラウドインフラストラクチャサービス市場規模は、2023年に1,220億ドルであり、2024年から2033年までの年平均成長率は17.30%で、2033年までに5,990億ドルに成長すると予測されている。

また、クラウドコンピューティング市場は、2024年に6,800億ドルに達し、2029年には年平均成長率16.40%で1兆4,400億ドルに成長すると予測されている。

主要企業と製品

クラウドオートメーション市場の主要企業には、シスコ(CSCO)、アマゾン(AMZN)、シトリックス、IBM(IBM)、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)などがある。

また、より広範なクラウド・コンピューティング市場では、Amazon Web Services、グーグル(GOOG / GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、Alibaba Cloud、セールスフォース(CRM)などが主なプレーヤーである。

市場のトレンド

  • 低コストのストレージとデータへの高速アクセスに対する需要の高まり。
  • 研究開発と新たな自動化ソリューションへの投資の増加。
  • 様々な業界におけるデジタルトランスフォーメーションの需要の高まり。

ハシコープの最近の財務動向

四半期別の総売上高(黒色の線:Total Revenues)は、それなりに高い成長率で伸び続けている。

一方で、四半期別の営業利益(青色の線:Operating Income)は、大幅なマイナスで推移しており、マイルストーンには程遠いものの、損益分岐点に向けて一定の前進を見せている。

一方で、四半期別売上総利益(黒色の線:Gross Profit)も総売上高とともに伸びている。

四半期別販売費および一般管理費(青色の線:Selling General & Admin Expenses, Total)は直近の四半期で前四半期比で減少しており、これは前向きな一歩であるように見える。

さらに、希薄化後一株当たり利益(EPS)はマイナスのままだが、損益分岐点に向けて若干前進している。

(上記グラフのデータはすべて百万USD単位・GAAPベース)

一方で、過去 12ヶ月で、同社の株価は23.5%下落したのに対し、iシェアーズ・エクスパンデッド・テクノロジー・ソフトウェアETF(IGV)の株価は55.8%上昇している。

ハシコープのバリュエーションとその他の指標

以下は、同社に関連するバリュエーションの表である。

(出典:FinChat.io)

成長、利益、フリー・キャッシュ・フローに余裕のある前提を用いたDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)に基づくと、同社の株価は、現在の21.50ドルに対し、約19.10ドルで評価されることになり、潜在的に今後のアップサイドが株価に織り込まれているように映る。

また、40%ルールとは、ソフトウェア業界の経験則であり、売上高成長率とEBITDA成長率の合計が40%以上であれば、その企業は、ソフトウェア企業として、許容できる成長とEBITDAの軌道に乗っていることを示すものである。

そして、同社の直近の調整前40%ルールの計算値は、下表のように2024年第3四半期決算時点でマイナス(9.1%)であったため、大幅な改善が必要である。

ハシコープに関するコメント

市場のアナリストとの直近の決算電話会議において、経営陣は次のように述べている。

  • 第3四半期は、売上高1億4,600万ドル(前年同期比17%増)と、トップライン、ボトムラインともにガイダンスを上回る好調な業績を報告した。
  • 経営陣は、マクロ経済が厳しい状況にあり、案件の精査が厳しかったにもかかわらず、チームは新規の大口顧客との重要な契約を獲得することに成功したと指摘した。
  • 企業のクラウド技術への移行が進む中、ハシコープはこの移行を実現する重要な企業として、長期的な可能性を確信している。
  • 戦略面では、同社は、特にインフラストラクチャーとセキュリティーの両製品のライフサイクル管理におけるGo-to-Marketメッセージングと戦略の簡素化に注力している。
  • このアプローチは、営業チームが同社の製品を効果的にポジショニングするのに役立つと期待される。経営陣は、顧客にとって価値あるユースケースに焦点を当て、AI機能を慎重に製品に統合することに注力している。
  • 厳しい市場環境にもかかわらず、同社は短期的な業績を改善し、長期的なビジネスチャンスを生かすための対策を講じてきた。これには、特に急成長を見せているハシコープクラウドプラットフォームを中心とした市場開拓の強化も含まれる。
  • さらに、効率性と営業レバレッジを高めることに重点を置いており、黒字化への前進に貢献している。
  • 経営陣は、24年度第4四半期のガイダンスを発表し、総売上高は1億4,800万ドルから1億5,000万ドルの範囲、Non-GAAPベースの営業損失は1,600万ドルから1,300万ドルの範囲と予想している。
  • 24会計年度通期については、総収入は5億7,600万ドルから5億7,800万ドル、Non-GAAPベースの営業損失は8,900万ドルから8,600万ドルと予想している。

市場のアナリストは、同社首脳陣に様々なトピックについて質問したが、主なテーマは、同社のGo-to-Marketアプローチに対する戦略的調整、企業顧客におけるクラウド導入の傾向、および一般的な市場環境に照らした上での慎重な財務見通しであった。

それらの質問に対し、経営陣はバランスの取れた見解を示し、現在の課題を認識する一方で、長期的な機会については楽観的な見方を維持した。

今後の見通しについては、2023年度の成長率29%に対し、市場のコンセンサス売上高成長率予想は27%となっており、同社の成長率はやや鈍化することとなっている。

経営陣は営業費用の点では優位に立ちつつあるが、全体的な営業損失は依然として大きく、営業損益分岐点に達するには長い道のりがある。

2024年には同社株式へのバリュエーション引き下げ圧力が弱まるかもしれないが、同社は営業損益分岐点に向けてさらに前進する必要がある。

以上より、同社が損益分岐点に向けて、一定の前進を実現するまでは、私の同社に対する見通しは「中立」である。

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アナリスト紹介

Donovan Jones ドノヴァン・ジョーンズ
拠点:米国
セクター:テクノロジー・IPO

ジョーンズ氏は、米国を拠点とする株式リサーチのスペシャリストであり、15年にわたり、米国のソフトウェア関連企業やIPO企業の投資を分析。主に、「高成長テクノロジー銘柄」、「消費者関連銘柄」、「資本財・サービス関連銘柄」、「メディア関連関連」、「ライフサイエンス銘柄」に焦点を当て、ファンダメンタル分析を用いて企業分析を実施。

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